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カミヤンを探せ! 美琴は上条の部屋の前にいる。今晩上条宅でご馳走を振る舞う約束をしたためだ。右手に薄っぺらな学生鞄、左手に上条ごひいきのスーパーで購入した食料を入れたビニール袋。しかし今回は美琴の隣には白井黒子がいる。上条と美琴の関係は白井も認めていて昨夜美琴がついポロリと発言してしまい、「お姉様の手料理を上条さんだけいただくとは許せないですわ。上条さんのご自宅にあがるのも気がひけますがお姉様の貞操を守るためわたくしもご一緒しますわ。」そんなこんなで部屋の前にいるのだが一向に上条が部屋から出てこない。居候のシスターも出てこない。ブザーを何度も押しているのだが部屋から人の気配は感じとれない。「こんなに呼んでも出てこないってどういう神経してるのかしらあの馬鹿。まさかまた事件に巻き込まれてんのかしら。どう思う黒子?」「上条さんの事ですから事件絡みで見知らぬ女性と何かしら起こってるかもしれませんわね。ってお姉様!?」美琴は自分の靴を黙って見つめてパチパチと電流を放っている。「黒子?もしアンタの言っていることが正解だったら遠慮なくあの馬鹿に能力使っていいからね。」白井がビクビクしながらですの。と返事した所に、「にゃーカミヤンの部屋の前で何してるぜよ?まさか部屋をぶっ飛ばしにきてるのかにゃー?」声がする方に二人が振り向くと金髪頭、青いサングラス、地肌にアロハシャツととんでもない格好した男、土御門元春がたっていた。「にゃー、警戒しなくていいぜよ。俺は土御門元春。カミヤンのクラスメートで部屋もカミヤンの隣だにゃー。」「え?土御門って名前は・・・もしかして舞夏のお兄さんですか?」「そうぜよ。義妹なんだがにゃー。」「そうだったのですか。わたくし白井黒子と申します。ご挨拶が遅れて申し訳ありませんですの。そしてこちらが・・・」「初めまして。御坂美琴です。よろしくおねがいします。」「にゃ?御坂ってどこかで・・・・・・・・・・にゃ――――!!常盤台のレベル5でカミヤンの彼女!!!」最後の彼女という言葉に美琴はビクッとなり、白井は「けっ」としらを切った。「そうかい。ここで御坂さんと会うなんてにゃー。カミヤンから耳に穴が空くくらいラブコメストーリーを聞いてるぜよ。」その言葉に美琴はボンと顔が赤くなる。良い彼女と言われて嬉しくてたまらない。美琴がショートしているのに気づいた白井はため息をつきながら「それで失礼ですが上条さんがどこにいるかわかりますでしょうか。」土御門は(ツインテールのこの子も舞夏には劣るがいい線いってるぜよ)と思いながら「カミヤンとは一緒に帰ったんだがいないとなれば学校に戻ってるはずだぜい。」土御門は二人の「「え?」」というリアクションを見てから「さっき俺の携帯に小萌先生から電話がかかってきてにゃー、補習のプリントを渡し忘れたから取りに来いと言われたんだにゃー。俺とカミヤンともう一人いるんだがこの三人は補習の常連ってわけで。俺も今から学校に行くし多分カミヤンは一足先に行ってるという俺の予想ぜよ。」なるほどな~と美琴と白井は納得した。美琴は上条に会いたいがために、「ご一緒してもいいですか?」と訪ねる。土御門は「喜んでだぜい。御坂さんからもカミヤンとの話聞いてみたいからにゃー。」白井はあからさまつまらない表情をしているが美琴がまんざらでもない顔をしていたのでついて行くことにした。このときまだ誰も違和感に気づいていない。上条、土御門の通う高校に三人は足を進める。土御門は質問をする度に顔を真っ赤にする美琴を見て楽しんでいる。白井は全くお姉様、わたくしには貞操を守れなかったのですねとぶつくさ言っている。すると美琴のふくらはぎあたりに何かがぶつかる。そのあたりから、「お姉様久しぶりー!てミサカはミサカは久しぶりの再会に感動してみたり。」打ち止めが御坂の足に抱きついていた。白井はすかさず「小さなお姉様が!こんな小さな頃から色々仕込めば・・・・げへへへぶごぉ!!!!」美琴の鉄拳がすかさず入る。「あなたはここで何してるの?」「あの人とお散歩してるだけ!てミサカはミサカはあの人を指さしてみる。」打ち止めが指した先には白髪で杖をつきながらこちらに歩いてくる少年がいた。「よお土御門にオリジナル。お前らが仲良く歩いてるってよォ、デキてんのかァ?」「何平和ボケしてるにゃー一方通行。御坂さんはカミヤンの彼女ぜよ。」「カミヤン?あの三下かァ。」「お姉様、土御門さんが一方通行と呼んでますがまさか・・・」「うん。でも何もしてこないわよ。この子もいるしね。」そう言いながら美琴は打ち止めの頭を撫でる。「お姉様がもってるビニール袋私が持ってあげる!てミサカはミサカはいい子だとアピールしてみる!!」「えぇ?嬉しいけどあなたには重いわよ?」「大丈夫!疲れたらこの人が持ってくれるから。てミサカはミサカは袋を受け取った矢先あなたにわたしてみる!」「チッ、クソガキが。」結局美琴は悪いと思い白井に持たせた。こうして右から土御門、一方通行、打ち止め、美琴、美琴の後ろに白井、と並び上条がいるであろう高校に足を進める。土御門と一方通行は真剣な顔で何やら話し合い、美琴と白井は打ち止めのたわいもない話を聞いてあげている。一方通行と美琴は打ち止めの手を握ってあげてる。なんとも奇妙な光景だ。「お姉様、何でわたくしがこの重い食材を持たないといけないのでしょうか。」「あら珍しいわね、いつもだったら奪うように持とうとするのに。それともこの子に持たせるつもり?学園都市最強のレベル5に持てと言えるわけ?」「・・・・なんでもありませんの。」やれやれと息を吐く白井。一番離れている土御門がふと思いついたように「にゃー白井さんだったかにゃ?御坂さんはカミヤンと付き合ってるが白井さんは彼氏とかいないのかにゃー?」「わたくしはお姉様がご一緒なら殿方なんか必要ありませんの。しかしお姉様が上条さんとお付き合いを始めてからお姉様はわたくしに目もむけてくれませんわ。」あのねえと美琴は言うが白井の耳に入らない。「そうかい。御坂さんにも振り向いてもらえないとは完全にフリーだにゃー。白井さんにお似合いの奴がいるんだけどにゃー。」「結構ですの。」白井はぷいとそっぽを向いた。この時点で違和感を感じたのはまだ白井黒子だけ。高校に到着。打ち止めがみんなと学校に入りたいとリクエストして土御門はあっさりOKを出し、こそこそする素振りも見せず、どうぞお入りくださいにゃと正面玄関から一方通行、打ち止め、美琴、白井を招き入れた。打ち止めは学校だ!学校だ!と大はしゃぎで下駄箱のドアをバタバタ開閉やっている。美琴は(ここが当麻の学校・・・)とポワ~ンと校舎にうっとり。一方通行と白井はくだらんと言わんばかりに無表情。すると5人に声をかけてくるエセ関西弁の声が。「土御門やないか!お前も小萌センセーのプリントもらいにきたんか?早速小萌センセーに怒られたで~」くねくねしながら土御門に報告してるのは青髪ピアス。土御門除く他の4人はうえ~とした表情をしている。「青髪、カミヤン知らないかにゃー。」「俺が職員室行った時に会ったで。携帯を机の中に忘れてたとか言って多分教室にいるはずや・・・・てなんやねん土御門!こんな可愛い子ぎょーさん連れて!ちょっとお姉さん綺麗やし可愛いでー。ツインテールの子もペタペタのスタイル、捨てがたいわ~。一番ちっこいお嬢ちゃん、お名前はなんて言うねや~?」打ち止めは怖く感じたのか、一方通行の後ろに隠れ、美琴と白井は何喋ってんだこいつ・・・と呆然として動けなかった。すると青髪の前に一方通行が立つ。右手で首筋のチョーカーに触れたと思うと同時に左手でぽんと青髪の背中を叩く。次の瞬間強烈な爆風が起こり、美琴達の視界が回復した時には青髪の姿はなかった。あれ?と数秒不思議に思っていると土御門が笑いながら指を指す。正門のところで青髪が伸びていた。「ちょっと!暴力はだめだってミサカはミサカは怒ってみる!」「うるせェな。お前があいつに触れられなかっただけでも感謝しやがれ。」「・・・・・白井さん、今のがお似合いのやつだったんだけどにゃー。」「わたくしはあんな変態さんには興味ありませんの。」それを聞いた美琴は苦笑していた。「さて俺は職員室に行ってくるからみんなはカミヤンの所に行ってくれ。教室は最上階に行けばすぐわかるにゃー。」そう言って土御門は職員室の方へ去って行った。「チッ、面倒くせェ。とっとと行くぞ。」先頭に一方通行が階段を上って行く。おどおどしながら一方通行について行く打ち止め、美琴、白井。一方通行がスタスタと上るため三人はワンテンポ遅れて上る。一方通行が二階に到着し、三階に上ろうとしたとき、ドドドドドと階段を猛スピードで降りる音が聞こえ一方通行と衝突する。完全にノーマークだった一方通行は吹っ飛び、廊下に倒れる。ぶつかった相手はもちろん上条当麻。美琴達は二階に着いたら一方通行が倒れてたもので驚きを隠せない。「すみません急いでいたもんで・・怪我はなかったですかっっっっっって一方通行!!それに美琴もなぜ?」「三下ァ・・テメエはやっぱり俺の手で殺されたいよォだなぁぁぁぁ!!!くこけかここけき・・・・・」「ななななな・・・上条さんは何回も死にかけてますしあなた様からも殺されかけたし・・・ごめんなさいでしたあああ!!!!」土下座モードに突入する上条。「暴力はいけない!てミサカはミサカは再びあなたに訴えてみる!」「・・・・チッ、まあ目の前で彼氏殺されるのは見てらんねェだろ。なあ彼女ォ。」ニヤニヤしながらチラっと美琴を見る一方通行。美琴は吐き捨てるように言った。「アンタは肝心な所がちっとも変わってないのね。」上条と一方通行はお互いどっちに言っているんだろうど考えた。土御門と合流した上条達は学校を後にした。(正門で伸びていた青髪ピアスに上条は驚いていたが特に気にしなかった)「悪いな美琴。わざわざ迎えにまで来てもらって。」「ホント、土御門さんと会わなかったら私と黒子は今の時間まで玄関前で立ち往生だったのよ馬鹿。」「私と黒子って、白井お前も部屋まで来たのか?」「お姉様の貞操を守るのがわたくしの使命ですの。」「さいざんすか・・・」「カミヤ~ン、今日は舞夏がいないし一人、だからご一緒してもよろしいかにゃ~?」「そういうのは美琴に聞いてくれ。料理作ってくれるのは美琴なんだからよ。」「御坂さ~ん。というわけでどうかにゃ~?」「(本当は当麻と二人でアーンとかして食べたかったけど・・今日は黒子もいるし仕方ないか。それにみんなと食べると楽しいだろうし。)喜んで。学校までご一緒してもらったのでお礼といってはなんですがどうぞ。」ニコっと答える美琴。「感謝するぜよ御坂さん!カミヤン、いいお嫁さんゲットしたにゃー。デルタフォースは解散になってしまうにぜよ。」美琴はお嫁なんてあはははと言いつつ真っっっっっ赤になっている。「お姉様ったらなんでもすぐ顔に出ますのね。プククク・・」そんな会話を聞いていた打ち止めがふと思いついたように、「私も今日あなたに料理を作ってあげる!てミサカはミサカはやればできる子をアピールしてみる。」「そうかい好きにしろ。不味いモン食わせたらテーブルひっくり返してやっからな。」「いざとなったらヨミカワに手伝ってもらうから大丈夫!てミサカはミサカは腕を組みながら晩ご飯の献立を考えるふりをしてみる!」「考えるふりかよ・・・・」一方通行と打ち止めと別れ4人は上条のマンションへ。エレベーターに乗った。密室の中。そこで全員違和感を感じ始めた。上条の部屋の前に着いた時、最後にエレベーターを降りた白井が悲鳴をあげる。「どうしたの黒子!?」「・・・お姉様・・今日は何を作るつもりでしたの?」「えと・・ハンバーグとマグロの刺身を・・・それがどうしたの?」「でしょうね。さっき初めて中身を見たのですが即座にわかりましたわ・・・」「だからそれがどうしたっっっう!!!!」白井が上条並みの負のオーラを出している。そして袋からも負のオーラが。「この挽肉!!魚の切り身!!!冷蔵庫で保存せず長時間日にあてるとどうなるかおわかりでしょう!!!」バッと挽肉の入ったパックを取り出す。取り出した瞬間異臭が広がる。「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」「この異臭はこの類人猿の脳そのもの!!あなたにはこれで十分ですの類人猿がああああああ!!!!!」ひゅんと白井が消えて次の瞬間、上条の頭上に現れ、手に持っていた挽肉のパック(綺麗にラップは剥がされてる)を上条の顔面にスパアアンと投げつけクリーンヒットさせる。「ぐぼぁ!?なんで俺なんだよ!?」「そもそもあなたが学校に戻らなければこんなことしませんでしたわ!」プチ戦争を目の当たりにしてる美琴はあたふたして何もできない。土御門は、「なんだか不味いことになってるぜい。ここは逃げるが勝ちだにゃ!」こそこそと自分の部屋に逃げようとしているのを白井は見逃さず、「類人猿の友も同じ類人猿!!金髪猿もこれをくらってなさい!!!」テレポートしたマグロの切り身が土御門の顔面にヒットする。「にゃあぁぁ!!カミヤンといるとろくな事起こらないぜい!不幸だにゃーーーー!!!」翌日、美琴は珍しく上条に謝り倒した。
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とある科学の執行部員 改訂版 はこちら。 第2章(3)「…美琴」上条が横になっている美琴の頭に右手を添えると何かが砕けるような音と共に、美琴は薄っすらと目を開けた。やはり魔術によって昏睡させられていたらしい。「…当麻」美琴は目を開けると大好きな上条の顔が最初に目に飛び込んできた。美琴は上条の太腿の上に膝枕の要領で頭を乗せていた。上条の顔には無数の傷があり、そして目には涙が浮かんでいる。「当麻、どうして泣いてるの?」美琴は上条の涙を拭うように上条の顔に手を差し伸べる。「悪い、俺の見通しが甘かったから美琴を戦闘に巻き込んじまった」上条と土御門の計算では少なくてもローマ正教の部隊は今日の深夜から明日の明け方に掛けて到着すると予想していた。しかし思ったよりもずっと早くローマ正教の部隊が到着してしまったため、上条と美琴が別れている間に美琴が襲われる形になったのだった。「私、当麻の役に立てたかな?」「ああ、もちろんだ。 垣根…他の『執行部』のチームのリーダーも驚いてたぞ。 初陣で魔術師を150人も倒すだなんて」「…当麻、私の方こそゴメンね」「どうして美琴が謝るんだよ?」「私、いつも自分のことばかりで当麻のことを知ろうともしなかった。 だから帰ったら当麻の話をいっぱい聞かせて欲しいの」「ああ」美琴は体を起こすと上条の体を見渡す。すると体中が傷だらけだった。「もしかして、私のせいで!?」「違うって、予想以上に手間取っただけだ」それは優しい嘘だった。そして美琴もそのことに気付いている。だから美琴は誓った、その優しい嘘を上条がつかなくていいよう強くなることを…「それに見た目は酷いかもしれないけど、骨にも異常はない。 さあ学園都市に帰ろう」上条は立ち上がると美琴に手を差し出す。美琴も上条の手を掴んで立ち上がった。そして二人は寄り添うようにして歩き始めるのだった。・・・ オルソラを無事にイギリス清教に預けると上条と美琴は『アイテム』の用意した車へ向かった。車に入ると麦野と運転手の男が上条たちを待っていた。「上条、もういいの? もう少しいちゃついてたって構わないのに」「これ以上、麦野たちに迷惑を掛けるわけにはいかないからな。 それより垣根は?」「アンタの戦闘の映像を見て、負けてられないって急いで帰っていったわ」「垣根はただでさえ強力な能力があるのに、格闘能力も高いからな。 まあそれについては麦野も同じだけど…」「女の子に対して、それは褒め言葉にならないんじゃない?」「ハハッ、悪い」すると会話に付いていけない美琴は上条に尋ねるように言った。「当麻、この人は?」「麦野沈利、美琴と同じレベル5で序列は第四位だ」「よろしくね、超電磁砲」「こちらこそ、よろしくお願いします」すると運転手の男が何か言いたそうに後部座席を見てきた。「浜面、アンタも何か言いたいことでもあるの?」「いや、俺も一応『執行部』の一員だから紹介してもらいたいなって…」「しょうがないわね、コイツの名前は浜面仕上。 ウチの新入りね、ただのスキルアウトにしておくには骨があるから私が拾ったのよ」「…浜面仕上、聞いたことがあるな。 そうだ駒場さんから聞いたんだ、駒場さんのとこで副リーダーをやってただろ?」「駒場さんを知ってるのか?」「ああ、駒場さんはスキルアウトって言っても 無能力者の自警団のようなことをやってるから、 偶に情報を提供してもらってたんだよ」すると麦野は何処か愉快そうに言った。「ウチのメンバーに滝壺っているでしょ。 コイツさ、その滝壺が魔術師に襲われてるのを拳一つで撃退したのよ。 まあ結局は滝壺に一目惚れしてただけなんだけどさ」「麦野、余計なこと言うなよ!!」しかし上条は特に笑うことなく、寧ろ浜面に親近感を持って言った。「恥ずかしがることねえじゃねえか。 好きな女の子のために戦う、全然恥じるようなことじゃねえよ」「良かったわね、浜面。 憧れの上条に認められたわよ」「憧れってどういう意味だ?」「コイツ、さっき上条の戦いの映像を見て上条みたいに強くなりたいって言ってたのよ」「わ、悪い、アンタみたいになりたいなんて、おこがましいよな?」「そんなことねえよ、チームは違うけど同じ『執行部』なんだ。 お互い頑張ろうぜ!!」「あ、ああ!!」そうして浜面が運転する車は学園都市へと向かうのだった。・・・ 上条と美琴は上条の部屋に戻ると上条の傷の手当を始めた。あちらこちらに内出血の痕と青痣が出来ていた。しかしそれ以上に目を引くのは体のあちらこちらにある古傷の多さだった。美琴は上条の背中の傷の手当を終えると、そのまま上条の背中に張り付くように体を預けた。「当麻は昔からこんな傷だらけになってまで、学園都市を守ってきたんだね」「まあ名誉の負傷ってやつだな」「ねえ、当麻は何のために戦うの?」「自分のためだろ」「でも当麻はいつか誰かのために…」「自分のためっていうのは、自分の周りの世界も含まれてる。 だから俺は自分の現実を守るために戦うんだ。 そして俺の世界の大半は美琴が占めている。 だから俺は美琴だけは危険な目に遭わせたくないんだよ。 今日みたいなことがあって、どの口が言ってるんだよって感じだけどな」「そんなことない、本当は当麻が私のために傷を負ったことだって知ってる。 でもね当麻がそうであるように、私の世界の大半も当麻で出来てるの。 だから当麻と一緒に私も戦いたい、その気持ちだけは分かって欲しい」「美琴…」「今のままじゃ当麻の足手まといになることは分かってる。 でも当麻に追いつけるように努力するから、お願いだから私を置いていかないで!!」美琴の最後の方の言葉は涙声になっていた。美琴の気持ちは分かる、しかし簡単に認めるわけにはいかなかった。「美琴の気持ちは分かってるつもりだ、 でも美琴を必要以上に危険に巻き込みたくないんだよ」「当麻の気持ちは嬉しい、でも私は絶対に諦めない。 必ず当麻の隣で一緒に戦ってみせる」こうなってはテコでも美琴が退かないことは分かっていた。そういう美琴だから好きになったのだし、守ってあげたいと思ったのだから。「じゃあ約束できるか? 何があっても単独行動はしない、俺の傍から離れないって」「約束する」「それじゃあ今日から俺達は公私に渡っての正真正銘のパートナーだ。 今日のような徹は二度と踏まない、 例え何があろうとも俺は美琴のことを守って見せるから」上条は自分にそう誓うと守るべきものの温もりを忘れぬよう、美琴を抱きしめ、美琴の唇に自分の唇を重ねた。そして上条は自分の幼少期と美琴に出会うまで過ごしてきた日々について語った。そのまま泊まりたいと言う美琴を宥め、寮まで送っていくと、傷ついた体を癒すように上条は深い眠りに就くのだった。
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小ネタ 出会ってちょうど半年の記念日 美琴「ねぇ。今日って何の日か知ってる?」上条「今日? クリスマスはもう終わってるし……。大晦日まであと何日だ、とか?」美琴「ヒント:今から半年前」上条「……すまん。俺、記憶がないから半年前の話は……」美琴「あ、そうだったわね。こっちこそゴメン」上条「もしかして、半年前の俺はお前と何か約束してたのか? だとしたら謝る」美琴「ううん、そうじゃないの。そうじゃなくってね」上条「……もしかして何か大事な日だったのか? うわ! すまん御坂! 記憶がないとはいえ思い出せなくて大変ごめんなさい!(土下座)」美琴「そんなに頭下げるような事じゃないわよ。えーっとね……今日は、私とアンタが出会ってちょうど半年の記念日」上条「……はぁ? なんだそういうことか。女ってホント記念日とか好きだよなぁ」美琴「いいじゃない別に。記念は記念よ……。ということで、これあげる」上条「何だこれ……。セーター?」美琴「おっ、お父さんに作ってあげるつもりだったんだけどちょっと失敗しちゃったのよ。だからアンタにあげる」上条「これのどこが失敗してるんだ? 編み目もきれいに揃ってるし」美琴「…………」上条「イニシャルも入ってる。失敗ってここか?」美琴「違うわよ! お父さんの名前は旅掛って言うの! 別に当麻のTと同じとかそんなことはこれっぽっちも言ってないんだから!」上条「とりあえず着てみていいか? ……あれ、サイズぴったり」美琴「へぇ……我ながら良くできてるじゃない」上条「ホントにな。裾の処理もきちんとできてるし、どこが失敗なのか俺にはわからん。ひょっとしてサイズか?」美琴「そっ、そうよ! サイズ間違えて編んじゃったのよ! 悪い?」上条「悪いも何も、俺手編みのセーターなんてもらうの初めてだ。あったかくていいなぁこれ。似合うか?」美琴「……うん」上条「御坂、ありがとな。俺の不幸指数がぐんと下がったぞ」美琴「そ、そう。手編みのセーターくらいで下がるなんて、アンタの不幸指数はいったい何が基準なのかしらね」上条「しまった。……これのお返しどうすりゃいいんだ」美琴「はい?」上条「サイズを間違ったとはいえ、御坂がこれに費やした労力を考えると……うーん」美琴「べっ、別にセーターを編むのは初めてとかアンタのことを想いながら空き時間に編んだとかそんなことはないから気にしなくていいわよ」上条「同じ手作り系で俺が飯を作ってやるってのも、お嬢の舌には合わないだろし、だからといって俺は編み物なんざできないしなぁ」美琴「ねぇアンタ、人の話聞いてる?」上条「……よし御坂。三択でお礼を用意したから好きなのを選べ。一、上条さんが御坂の一日専用機二、上条さんが御坂のシステムスキャンをお手伝い(本気で能力ぶちかますための的になる)三、上条さんがゲコ太コスプレで学園都市中を練り歩くどれがいい? 一はすでにやってるから、お勧めは二だな。常盤台の機械でも、お前がセーブしないと能力計れないらしいし」美琴「……四、アンタが私の彼氏になる」上条「…………え?」美琴「なんてね。冗談よ冗談。お礼なんて特にいいわよ。出来映えが確認できただけで十分だし」上条「いやでもさ、手編みってのは……」美琴「美琴センセーが良いって言ってんだから、素直に受け取っときなさい、だいたい、アンタが提示したお礼の二番なんて、まともにやったらアンタ死ぬわよ? 私の超電磁砲が八連発で飛んでくるんだから、受け止めきれるとお思い?」上条「はっ、八発!? 雷撃の槍じゃなくて?」美琴「そっちもやるけどシステムスキャンのメインは超電磁砲を連続で何発撃てるか、よ。じゃ、私帰るわ。記念日に贈ったセーターなんだから、大切にしてよね?」上条「ああ、うん。ありがとう、御坂……」美琴「自分で出した四番は無理でも、せめて一番って答えればよかったなぁ。どうして素直になれないんだろう……」上条「御坂が冗談ですませたときは決まってろくでもないことが起きる……。電撃も拳も飛んでこないことがこんなに不安だったなんて、俺はマゾだったのか? 手編みセーターもらってハッピーなはずなのに、後のことについてびくびくしなきゃいけないなんて不幸だー!」
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 「無」 無糖(10-610)氏 ▲ 無糖(10-610)氏 twenty_five_reverse twenty_five_reverse_plus MAX紅茶的な何か とある秋の日常風景 1 小ネタ しりとりで勝負よ! 小ネタ とある依存性 とある秋の日常風景 2 ▲ 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 Back
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可愛い顔の策略士 硲舎佳茄(はざまやかな)という小学生の少女は一人退屈そうに公園のベンチに座っていた。大切にしていたバッグを犬に奪われ、セブンスミストの爆発に巻き込まれ、カミキリムシに髪の毛先を切られてしまうと少し可哀相な女の子だ。友達がいないわけではないがこの日は友人に遊ぼうと電話をかけても運悪く都合が合わず一人ぼっちになっていた。「う~ん、みんな忙しいのかな~?」佳茄は携帯の画面とひたすらにらめっこをする形に。スクロールし続け、ある一人のカーソルに止まった。「お姉ちゃん」と書かれてあり、何かあったら連絡してね。と言われたのを思い出し、勇気を振り絞って電話をかけた。「あ、もしもし?・・・あの、佳茄だけど・・・うん」2度、3度うんうんと頷き、その後パァっと顔を明るくさせて喜びを爆発させた。「うん!ありがとう!!じゃあ公園で待ってるね!!」通話を切り佳茄はニコニコしてこれから来るであろう人を待つ。でも今から準備して出て来ると言っていたので早くてあと20分くらいは掛かるだろう。喉が渇いたな~と感じて目の前の自販機に向かった。すると自販機の前には佳茄の見覚えのある少年が。「あっ!」「ん?」佳茄の声に反応してボタンから目を離した少年は恐らく間違えただろうイチゴおでんを押していた。少年はそれに気付かず熱々のイチゴおでんを手にとって「ぎゃぁ~!」と叫んでいるが佳茄は気にせず少年に満面の笑顔で声をかけた。「おにいちゃん!!久しぶり!!」「・・・え?」佳茄にお兄ちゃんと呼ばれた少年、上条当麻はダラダラと汗を流し始めた。 (待て待て待て待て上条当麻。今この子俺のこと「お兄ちゃん」と呼んだよな?もしかして親戚の妹?いやいや!乙姫という従妹がいるし!!もしかして親父が母さん以外の人の・・・ていうかこの子と知り合い!?ていうか記憶を失くす前の俺がこの子に「お兄ちゃんと呼びなさい」とでも言ったのか昔の俺!?ぬぁーー!!ここに来てまた記憶喪失が仇になるとはーーーーー!!!!)過去に知り合っていたのもあるがただ単に小学生の女の子が男子高校生のことをお兄ちゃんと呼ぶのは普通だが少年の頭の中は混乱したまま。「お兄ちゃんそのイチゴおでん飲まないの?」「え?あ、あぁ。間違えて押したから・・・」「じゃあ私にちょうだい?」「い、いいけど・・・」佳茄は少年からイチゴおでんを受け取って再びベンチに座り、ゴクゴクとイチゴおでんを飲み始めた。少年は飲んでいる様子をうわぁというような表情をして佳茄を見る。それに気付いた佳茄は「お兄ちゃんも一緒に座ろう?」と隣を勧めた。「は、はぁ・・・」むやみに去ろうとすれば少年にとって知らない小学生の女の子がどんなリアクションをするか予想がつかないのでとりあえず従う。だが佳茄も少年も特に話すことがなく、ただ時間だけが過ぎていくが佳茄が少年に話しかけた。「お兄ちゃん暇なの?」「ん?補修帰りだし今日は暇だぞ?」「あっ!そういえばお兄ちゃん!もうすぐ常盤台のお姉ちゃんが来るの!!」「常盤台?君の姉ちゃん常盤台なの?」「ううん、今から一緒に遊んでくれるの!」「へえ、いいヤツなんだな」若干会話がかみ合ってないんじゃない?と少年は少し思いながら会話にエンジンがかかった佳茄に優しく相槌を返す。そんな時、佳茄の待ち人は来てしまうもので「お~い佳茄ちゃ~ん!お待たせ~」遠くから駆け足でやってくる常盤台の制服を来た少年も見覚えのある少女が。「御坂!?」「あ、アンタが何でここに!?」 そして、佳茄のリクエストによりセブンスミストに移動する3人。上条、佳茄、美琴と隣に並んで歩く。しかも手を繋いで・・・「なあ御坂」「な、何?」佳茄に聞こえないように声をかける上条。顔の距離が近いのでドキドキしてしまう美琴。「お前さ、俺とこの子が知り合いな理由って知ってるか?」「そっか、アンタ記憶が・・・時間がないから簡単に言うわよ。アンタがその子を連れてセブンスミストにいたの。たしか店を案内するためとか言ってたっけ・・・」「俺ってもしかしてとんでもない変態だった?」「ええ、今と変わらないくらい」美琴の返答に「ひでえ・・・」と小さく呟く上条だが美琴は気にせず佳茄に話しかけた。「ねえ、佳茄ちゃんはセブンスミストで何買うの?」「えっとね、お小遣いもらったからお洋服と水着を買うの」「そっか。なら友達に負けないくらいおしゃれな物買っちゃおうか。私も買いたい物あるし」「うん!」女子同士で盛り上がる所に一人取り残される上条。(おいおい、女子の買い物って長いと聞きますけど?しかも2人もいるとなったら倍くらい掛かるんじゃねえの?迂闊に暇だと言わなきゃよかった・・・)これも不幸の一つか・・・と思いながら2人と並んで歩く上条。上条が一人不幸だ~と落ち込んでいる中、美琴と佳茄は「お姉ちゃんは好きな人いるの?」「ふぇ!?な、何よいきなり!」「お姉ちゃん美人だから告白されたりするだろうし好きな人いないの?」私たちと一緒に歩いてる人よ!なんてとても言えず、チラチラと不幸だ~と嘆いている上条を見てしまう。それに気付いた佳茄は少し考えて「もしかしてお兄ちゃん?」と確信を突いてきた。「な、なんでコイツなんかと!!」「でもお兄ちゃんのことさっきからずっと見ていたでしょ?」「だ、誰がコイツのこと意識して見るっての!?ただ近い距離にいるから自然と視界に入るだけで・・・」「お姉ちゃん、顔赤いよ?」「うっ・・・・・」考えてみれば顔が熱い。上条のことになると隠し事ができない自分だと気付いているのでシラを切るのは無理だと思った。「そ、そうよ。でも絶対に言わないでよ!」「わかってるよお姉ちゃん。よかったら佳茄が協力してあげる」協力すると言っても小学生の考えることだからどうせ「ねえ、お兄ちゃんはお姉ちゃんのこと好き?」と直接聞くのがオチだろうと美琴は考え、逆にありがた迷惑で終わるだろうと予測する。「大丈夫、佳茄がお姉ちゃんの恋のキューピットになってあげるから」天使のような笑顔で美琴にだけ聞こえるように囁く。本当にキューピットになればいいのだが・・・ セブンスミストに到着し佳茄は早速洋服売り場へ向った。佳茄は美琴に協力すると言ったが特に行動をするわけでもなく早速服を選ぶことに夢中になっていた。佳茄はう~んと唸りながらお気に入りの服を探す。少し置いてけぼりの上条と美琴は佳茄の後ろに並んで立つ。「御坂、お前も一緒に探してあげたら?こういう服とか好きなんだろ?俺聞かれてもよくわかんねえし」上条はデリカシーの欠片もなく近くにあった少女向けの可愛い服(美琴のドストライク)をむんずと手にとって渡した。「アンタねぇ、こういう服はもう少し大事に扱いなさいよ。あ!ほらアンタが乱暴に取ったからもうここシワになってるじゃない!!これ売り物なのよ!?わかってるの!?」「ご、ごめんなさい・・・」美琴からの説教によりシュンとなる上条。佳茄はその様子を見てアハハと笑っていたがふとあることを考え付いた。「ねえお兄ちゃん、この服、佳茄に似合う?」「ん?そうだなぁ~」「正直に答えないとダメだからね!?」いつの間にか選んだ服を肩に合わせて上条のほうを向いた。「可愛いと思うけど・・・」「アンタ、「けど」って単語必要ないでしょ?充分似合ってて可愛いじゃない!」「いや、確かに似合って可愛いと思うのですが、何と言いますかこう・・・」「何よ・・・」上条はう~んの唸りだし言葉を捜そうと考え込む。「そうだ!まだ小学生だからちょっと背伸びしすぎているように見えるんだその服だと。もう少し年齢に合った服装がいいというか」「へえ、珍しくアンタにしては真面目な意見を言うじゃない・・・でも、言われてみると確かにちょっとまだ佳茄ちゃんには早く見えるかも」「えぇ~、そんなことないよぅ~」上条と美琴の意見に不服な顔をするがこれは佳茄の計画通り。佳茄が選んだ服はギャルが着て初めて似合いそうな派手目な柄のタンクトップ。見た目純粋度100%な佳茄が着るとただの派手なファッションになってしまうだけだ。「そうか~私にはまだ似合わないか~・・・あっ!!」ここで佳茄が何か閃いた(演技だが)。「お姉ちゃんこれ着てみない?」「ふぇ???」 「佳茄にはまだ似合わないだろうけどお姉ちゃんは似合うんじゃないかな?」「な、ななな、無理よ私は!私には少し派手だって!しかもサイズ違うし!」「そんなことないよ~。お姉ちゃん美人なんだから。ね?お兄ちゃん?」「んあ?」ここでコイツにフリますか!?と美琴は佳茄の協力というものにノーマークだった。上条はというと・・・「ふむ、確かに御坂の言う通り少し派手かもしれないけど俺は似合うと思うぞ?」「んな・・・///」アホな返事をしたかと思えば素で真面目に応えていた。「まあ、それだけだと少し露出が多いからその上から何か羽織っても問題ないだろうし。待てよ?むしろ最近の女子は露出が多いファッションを好む傾向があるのか?」「ちょ、ちょっとアンタ!ストップ!!」慌てて美琴が上条を止める。「アンタ正気!?っていうか珍しく真面目になってどうしたの?」「失礼な。これでもない頭使って考えたんだぞ?それに御坂、お前はいつも制服だから違う服装だと印象が変わるかもしれないし」「何よそれ!!私に見飽きたっていうの!?」「いや、そうじゃなくてだな・・・」佳茄はこのままでは拉致が明かないと思い二人を制止させるための一言を放つ。「お姉ちゃん、試着は自由だから一回着てみようよ。ほらほら!!」「え?ちょ、ちょっと待ってよ!!」佳茄は自分が持っていた服を美琴に渡しグイグイと背中を押して試着室へ押し込んだ。「じゃあお姉ちゃん、着替え終わるまでここを出ちゃダメだよ!?」「えぇ!?こ、ここここれ!!・・・」カーテンを強引に閉めて笑顔で佳茄は上条に聞いた。「お兄ちゃん、楽しみだね?」「ん?それより佳茄ちゃんの服決まったか?」「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」どこまで行っても一筋縄では敵わないのが世界を救ったヒーローなのだ。だが佳茄にとってはまだ上条が美琴の気持ちに気付いていなくても構わない。問題はこれからなのだ。今までの様子を見る限り美琴は着替え終わって上条の前に立てば顔を赤くするに違いない。それを見た上条は「熱でもあるのか?」とボケを飛ばすかもしれない。ここで自分が何か爆弾になるような言葉を放てばまだいくらでも進展はある!!・・・・と佳茄はこれまでの2人の様子を見てこう推測する。 シャーっとカーテンが開いた音が聞こえてきた。「お、出てきたか」先に上条が気付き試着室の前まで行ったが美琴が上条の存在に気付いた途端もの凄い速さでカーテンに隠れた。「ば、バカ!!なんでアンタが見に来るのよ!!」「なんでって・・・一応俺も試着終わるの待ってたんだし」「む、無理!!こんなの見せられないって!!」「ねーねーお姉ちゃん、佳茄はいいでしょ~?」「え?う、うん。でもこっちに来て!!」美琴は佳茄を試着室の中に入れ、カーテンをまた閉め上条から見えないように佳茄に「ど、どう?」と聞いた。「お姉ちゃんすっごく可愛い!!」「そ、そう?でもこれって佳茄ちゃんのサイズの服よ?ピチピチというかこれおへそ丸見え・・・」美琴に渡した服は佳茄のサイズのため美琴には相当小さい。肩幅はかろうじて大丈夫だが丈が短くヘソが丸見え。常盤台のミニスカにこの服の組み合わせだとこれからビーチにでも行くのかと尋ねられそうな感じ。「ねえお兄ちゃんにも見せてあげようよ?」「い、嫌だ!こんな格好見せたくないってば!」「お兄ちゃ~ん!」お姉ちゃん可愛いでしょ~?」「コラ!やめて!ぎゃあ!」佳茄は美琴の抵抗を無視してカーテンを開けた。目の前には上条が立っており、退屈そうな顔をしていたが・・・「んなっ!!///」美琴の格好を見た瞬間顔を真っ赤にした。美琴は見られた恥ずかしさで体が硬直してしまい、体を隠そうにも隠せない。そんな隙だらけの美琴に佳茄は、「ほら、ここの端っこをこうやって結ぶともっと可愛く見えるよ?」キュッと丈の先っぽを結んで「ほらっ」と自慢するように上条へ披露した。先を結んだことで美琴の腰のラインがまた強調され(しかも生肌)、まだ中学生である美琴のこれからの成長が期待せざるを得ない程のスッとしたプロポーションに上条は驚きを隠せない。(御坂のヤツってこんなに・・・・///)「ちょっと!!さっきから何ジロジロ見てんのよ!!さっさと消えなさいよこのバカ!!」「うわぁ!!す、スマン!!」正気を取り戻した美琴から吼えられ、かなり慌てた上条。上条からすれば見惚れていましたなんて言えるわけがない。慌てて試着室から離れてどこかの角へ消えて行った。「ったく、あの変態め・・・」「違うよお姉ちゃん。お兄ちゃんは変態じゃなくてお姉ちゃんが可愛くて見惚れていたんだよ?」「へっ?ウソ?そんなことあるわけ・・・」「だってお兄ちゃんも顔が赤くなっていたもん」美琴はパニックで上条がどんな表情をしていたか覚えていなかったが純粋100%(と思っている)の佳茄が言ってくるとなると信用がどうしてもあがってしまう。「ふ、ふ・・・」「どう?お姉ちゃん嬉しい?」「ふ・・・」「お姉ちゃん?」「ふにゃぁ///」「わっ!!お姉ちゃん!?」茹蛸のように顔を赤くしてその場にへたり込んだ。佳茄がいるので漏電しなかったことを美琴は自分で盛大に誉めて意識は朦朧としていった。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/――ふたり―― 変化を兆す初詣[誓う守り] 大晦日(夜) ~上条宅にて~ 上条当麻は実家のほうで年を越すことにしていた。 インデックスは小萌先生と姫神とで新鮮食い倒れ旅行に行ってしまったので、帰省することに決めたのだ。 今ごろ年中腹ペコシスターは旅行先の調理場と小萌先生の財布を阿鼻叫喚に渦に叩きこんでいることだろう。 初詣は家族そろって日付が変わる頃に行くことにしていて、外出までの空いた時間はリビングでグータラしていた。 今こそ不幸生活に終止符を!今週のこの時間からは《とある幸福の上条日記》が始まるのですよ~といった具合に。 そんな平和を満喫していた上条を嘲笑うかのように携帯電話の着信音が鳴った。 電話主の名前は 御坂 美琴。 『もっ、もしっ、もしもし?』 取りあえず切る。 『ちょっとアンタは!何勝手に切っ』 気のせいと思い切る。 『人の話を聞』 電源を切ろうかと考えていたところ… 「あらあら当麻さん。どうしたのかしら。さっきから様子が変よ?」 母、上条詩菜に心配されてしまった。やはり着信音とバイブレーションは幻聴と幻覚ではないらしい。 まさかの番組打ち切りっ!?まだ一話なのに殺生な!と現実逃避してみるがまったく着信は止まない。 観念して電話に出るしかないようだ。 「何か用かビリビr『いいかげんにしろぉぉおおおーーーッ!』」 興奮と怒号により荒くなった息を整える美琴と、耳元で叫ばれたので聴覚が麻痺した上条。 お互いの事情で電話は通話状態のまま一時中断された。 『アンタ、あれよね。以前から思ってたけど一度耳鼻科に行ったほうがいいんじゃない?』 「すいません」 『なんだったらこの美琴先生が直々に治してあげましょうか?コレで。さぞかし風通しも良くなるんじゃない?』 「ごめんなさい!それだけはご勘弁を美琴様ぁーー!」 ジャラジャラという音を聞いて、上条は電話越しに土下座モードに移行する。 その様子を見ていた詩菜は何か感じてしまったのか、 「あらあら、今の当麻さんに激しくデジャビュを感じてしまうのは何故かしら。 一体どこのどなたに影響を受けてしまったのでしょうね、刀夜さん?」 この問いに父、上条刀夜もごめんなさい、と息子同様になるしかなかった。 そんな上条夫妻はさておき、不幸センサーをビンビンさせながら上条は用件を尋ねる。 「それで何の用だ?ビリビリ」 『ビリビリ言うな!それはそのぅ…アンタと…一緒に…今夜初詣に…』 「初詣?いや上条さんは先約がありまして…」 『…へ?』 「聞こえなかったのか?だから先約があるって。あ、なんだったら一緒に行くか?」 『…』 先約と表現するも単に家族で出かけるだけなのだが、しかしてこの物言いが勘違いのもとになってしまう。 無意識に出てしまった言葉なので上条も気付かない。 どうしたービリビリ?、と続けようとしたところを詩菜が遮った。 「当麻さん、お友達からのお誘い?」 「うん。ほら大覇星祭のときに会った常盤台中学の」 友達ではないよなーあれ?御坂とは傍から見たらどうなんだろーと思いながら返した。 「私たちの事は気にしないで、行っても大丈夫ですよ」 詩菜は事情をどこまで察したのか、ここにはいない誰かさんに救いの手を差し伸べる。 しかし簡単にいかないのが世の常。刀夜のデリカシーの無さが妻に向けられた。 「いいのかい?母さんいろいろ準備してたみたいだけど…」 本人は愛する妻を気遣ったつもりなのだが、妙な気遣いが女の子の気持ちをスルーすることに結婚しても学習していないらしい。 「刀夜…さん?」 言葉で表現しにくい黒いなにかを発しつつある妻に危機を感じたのか、刀夜はいつものようにDOGEZAする。 「友好関係を深めるのも大切ですよね父さんたちのことは気にせず行ってらっしゃいだからお願いしますから許して下さい母さん!」 またもやいちゃつき始めた両親を尻目に、上条は美琴に行ける旨を伝えようとするが… 「あれ?切れてる」 ________________________________________________________________________________ ~御坂宅~ 断られるかもしれないことを御坂美琴は予想していた。 (『初詣?いや上条さんは先約がありまして…』) 家族で行くなら家族と行く、そう答えると考えていたのでまさか先約と言うとは思わなかったのだ。 誰と行くのかを聞けば良いのだけれど、他の言い回しを考えていなかったのでついフリーズ。 「はぁー」 落胆してしまうのは避けられない。 成功したらと誘う前からいろいろ想像(妄想とも言う)していた予定が消えてしまい、負の感情に苛まれていく。 先約ってことは他の女と? まさか現地妻がいるのだろうか? 普段のスルーっぷりや周りにいる美少女の多さから鑑みるに既に心に決めた人がいてもおかしくはない。 あのシスターなのだろうか? 彼の両親とも先に知り合っていたようだし夏は一緒に海に行ったらしい。 もう付き合いも公認なのか?既に婚約!?結婚届け!?学生結婚!?新婚旅行!? 先ほどからやたら出てくる[婚]の一文字に惑いながら思考が泥沼と化していることに気付いていない。 そもそも[他の女]という単語が出るあたり若干のヤン化が始まっていることに自覚があるのだろうか。 でも…ここは外でそれに… 上条当麻は記憶喪失だ。曰く、約半年ほど前に記憶を失いそれ以前のことを覚えていないとの事。 ならば現地妻説は薄れるはずだが、もしかしたらという考えが不安を捕えて離さない。 (「不便だけどなんとかやっていける。それに事情を知ってる奴が一人でもいると心強いし、御坂と話すときは気が楽だしな」) 記憶の件は偶然知り、彼に尋ねてそんな風に答えてもらった。 記憶喪失という深刻な事態であるはずなのに、それでも笑っていた彼を思い浮かべる。 すると、必要以上に美化された当麻氏を回想してしまったせいか頬が紅潮し、恋する乙女のソレへと変貌していく。 最近はいつもこうよね… 上条への思いが恋だと自覚して以来、彼のことを考えるたびに心がぐるぐるする。 素直になれないが故に偶然を装ってでしか話かけることができず、彼の姿を探して街をぶらつく自分にいらいらしていた。 それでも彼と日常を過ごせた時は心がふわふわする。 具体的に言うなら、出会えたとき、無視されずに楽しく会話できたとき、またなと別れ際に声をかけられたときなどだ。 しかし、別の女性とそんな時間を楽しそうに過ごしている場面を見ると心がずきずきする。 アイツはどうなんだろう… そのとき携帯からの着信音が彼女を現実に引き戻した。 電話主の名前は 上条 当麻。 彼からの連絡はわかりやすいよう着信音を特別にしていた。 もしこれが別の人からだったら気付かないところだったかもしれない。 携帯を震える手で掴み、深呼吸して、通話ボタンをプッシュ。 「先約があるんじゃないのアンタは」 『いきなりだなオイ』 全くだ。いきなりすぎる。アンタはいつもそうだ。 「なによ」 『初詣行くんだろ。何時に何処にいけばいいんだ?』 あれ?先約はどうしたの? 「…いいの?」 『いいもなにも誘ってきたのはお前だろ』 これはつまり…デート出来るってことよね? 「ええっと、ちょっとまって、時間!そう時間確認するからっ!」 『おーい落ち着けー』 無理だ。落ち着けるはずがない。他でもないアンタとなんだから。 「取りあえず後でメールするから、だからっそのっあのっ」 『?』 「あっあっありがっ」 『さっきから変だぞ』 誰のせいだ誰の。 「なんでもないっ!」 『じゃあ切るな』 電話が終わり、またもや自分に落ち込んでしまう。 どうしていつも素直になれないのだろう。 しかもありがとうの一言さえ言えないなんて。 「はぁー」 ため息を吐く。でも、ちょっと前のソレとは込める意味が違う。 「急に無理言って誘ったのに…ありがとって言いたいのよ。ばかっ」 結局、自分の都合に合わせてくれた。先約よりも自分を優先してくれた。その事実に、彼の優しさに、悶えてしまう。 「ありがとぉってぇ~♪言いたいのよぉ~♪ばかぁ~♪でもぉ~♪そんな当麻がぁ~♪だいちゅきぃ~♪」 まるで[ツンデレ]から[デレ]だけを抽出し濃縮したような言葉を聞こえてきた。 びっくりして振り返るとそこにはニヤニヤしながらこちらを見ている母こと、御坂美鈴が立っている。 ご丁寧に悶えているところまで再現しているのは余計だろう。 「ちょっとなに聞いてんのよ!いったいいつからっ!」 「いつからって『それはそのぅ…アンタと一緒に今夜初詣に…』から?」 「ほとんどじゃないのよっ!」 声をかけたのに無視したのは美琴ちゃんでしょ?と言いながら何やら木箱を差し出してきた。 しかも今度はニマニマしている。 「それはそうと美琴ちゃん、ここに初詣デ―トに必要なものがあるんだけどどうする?」 ________________________________________________________________________________ 元旦 ~某神社にて~ 「っつーか、人を呼び出しておいて本人いねーのかよ」 日付が変わったばかりの時間なので外は寒い。 少し厚めのコートとマフラー、そして手袋などの防寒具を用意したが寒いものは寒いのだ。 不幸だ、とため息をついて上条は辺りを見回すが約束の相手はまだ来ていない様子。 境内は参拝客で賑わっており、あの中に入らないといけないのか、と不満をこぼさずにはいられない。 理由その1 上条当麻は不幸体質であり人ごみは鬼門だ。 気付いた時には財布を落とし、注意はしていても誰かにぶつかり因縁をつけられる、などなど。 もっとも人ごみの有無に関わらずトラブルを起こすことに今は言及しない。 理由その2 地域別による温暖と寒冷の格差現象。 カップル地方には比較的暖かい陽光が降り注ぎ、より過ごしやすく愛を育む一日になるでしょう。 ロンリー地方はカップル地方からラブラブ前線の影響により砂を吐きたくなり、外出を控え部屋の隅で膝を抱えたくなる一日になるでしょう。 気象予報士がいたらそうコメントを残すに違いない。 なおラブラブ前線は停滞しておりカップル地方に引っ越すしか対応策はないので悪しからず。 「ごめーん、着付けとかで遅れちゃった」 その声を聞いて舌打ちしたくなる。また格差が生じてしまったらしい。 「あけましておめでとうって、なに一人でブツブツ言ってんの?」 やはりこの右手は異性との縁まで打ち消してしまうのだろうか。 そもそも神の奇跡やら何やら打ち消してしまう能力者が参拝するのはおかしい気がする。 「ちょっと?聞こえてる?」 女の子の容姿はレベルが高いらしい。あの娘マジ可愛くね?的な男性諸君のつぶやきが聞こえてきた。 でもそんな人と縁があるわけねーよなーと思った自称駄フラグ建築士上条当麻は―― 「不幸だ」 ――と言ってしまった。 瞬間、上条さんの周りの温度が下がる。 「人をさんざん無視しておいて…」 ポツリと言った声に聞き覚えがあったので振り返ると 「あれ?なぜ汗が噴き出るのが止まらないんでせう?」 そこには綺麗という言葉が似合う少女がいた。 「慣れない着物とか下駄とか苦労してたのに…」 顔は俯いていてよく見えない。 「もしかして…」 けれど彼女から発せられる怒気やら電気やらには覚えがあって… 「終いには…そんな女の子に向かって…不幸だとかどういうことなのよゴラァァァアアアーーーッ!!」 《とある幸福の上条日記》は製作者の事情により《とある不幸の上条日記》に変更したようだ。 雷神様の怒りを買って約一時間後。 そこにはぎこちなくもカップルに見えなくもない二人がいた。 「ちょっと歩くの速いって。下駄なんだからもっと気を使ってよ」 「おぅ」 手をつないで歩いてはいるものの、ガチガチに緊張している様が台無しにしている。 「ちゃんと聞いてるのって、きゃっ!」 「うわっ御坂っ!」 美琴がつまずいて転びそうになるのを上条が抱きとめる。 「ありがと…」 「おぅ」 このやり取りも通算5回目なのだが全く変化がない。 上条は美琴を抱きとめる度に彼女の柔らかさや香り、濡れた上目づかいにやられそうになった。 しかも美琴も恥ずかしいのか、顔を真っ赤にしてプルプル震えている。なにこの可愛い生き物。 今の美琴は色々とヤヴァイ。 普段とは異なった格好に違う一面を見ている気がする。 いつもなら彼女は彩度の低い制服姿だっただろう。 今は違う。 艶やかな赤い生地に気品のある刺繍の入った着物。でも不思議と派手な印象は無い。 整った顔立ちには必要無いと思っていた化粧が施されていた。 その容貌は、中学生と表現するには大人過ぎる。 そんな存在に今の状況を加えれば、動揺と緊張で固まるのは避けられない。 いつもの彼女に可愛いだの綺麗だのと意識したことは無かったはずだ。 だけど今はどうだろう? 込み上げてくるなにかを押し戻し、いつも通りに振舞おうとするも上手くいかない。 「(どうしてこうなった…)」 上条は事の始まり思い出す。 雷神様を怒らせてしまい、なだめるために上条は今までの経験を総動員して対処にあたった。 単に土下座スキルを全開にしてひたすら謝っていただけなのだが… なだめるために使うスキルが土下座しかない自分の情けなさに泣きたくなる。 それでようやく怒りが静まったと思ったら―― 「あけましておめでとう」 「あけましてまことにめでとうございます」 「新年早々アンタは私を怒らせたわよね?」 「その通りでございます」 「不愉快な思いをさせたわよね?」 「面目次第もございません」 「じゃあもちろん一日中言うことを聞くのよね?」 「それはさすがに…」 「 聞 く の よ ね ! ! ? 」 「もちろんでございます姫!」 理不尽な気がするんだけど何故だろうと惑う上条をスルーし美琴は続ける。 「まずアンタは今日一日私の…かっかか彼氏役なんだからね!」 「はい?」 突然の彼氏役任命の儀に呆気にとられる上条。 この流れにはどこか覚えがある。 「ナンパ避けとか色々あるでしょっ!察しなさいよ!」 「あー」 どうやら上条の不幸センサーに曇りは無いようだ。 呼び出しに応じた事を後悔するがもう遅い。 「というかアンタに拒否権は無いのよ!黙って言うこと聞けばいいの!」 「はぁー、ふこ」 不幸だ、と言いそうになるのを止める。 同じ過ちを繰り返せば今以上に重いペナルティーを課せられるだろう。 「じゃあ…はい」 美琴はおずおずといった感じで上条に手を差し出してきた。 「あのぅ…美琴サン?この手は一体なんでせうか?」 「今のアンタは私の…かっ彼氏なんだからちゃんとエスコートしてよっ!」 そんなこともあり上条は美琴と手をつないで寄り添いながら歩いているワケだ。 人ごみも酷いしはぐれると危ないもんな、と自身を納得させ、隣にいる未確認電撃物体に目を向ける。 (俺も結婚できたらこんな風に奥さんの尻に敷かれる生活になるんかね――) 漠然と考えながらまだ見ぬ未来に上条は想いをはせていた。 ________________________________________________________________________________ 上条が思考をどこかに飛ばしていたころ美琴も出陣前に母から言われたことを思い返していた。 「でも初詣に誘うぐらいで美琴ちゃんも大袈裟よね~♪」 「うっさい!」 余計なお世話と言わんばかりの美琴。 「付き合ってるんだからもっと素直にならないと損するわよ?」 「つっ付き合うなんてそんなっ!」 「嘘っ!まさかまだ付き合ってないの!?」 美鈴は美琴に驚愕の視線を向けてきた。 「ッ~~~!!」 「あのねぇ。恋心を自覚したのがつい最近ってわけでもないんでしょ?」 娘の奥手っぷりに呆れ顔で美鈴は続ける。 「一端覧祭とかクリスマスとかイベントあったでしょうに…」 「それは…全然会えないし…連絡も取れなくて…」 美琴も上条と親密になろうとしていたのだが、そのイベントやらの準備で忙しくなかなか会えなかった。 仮に会えたとしてもツンツンしてしまったり、意識が吹っ飛んだりとコミュニケーションになっていないという悲劇。 「どーせ素直になれなかっただけじゃないの?さっきの電話のように」 図星を突かれて何も言えなくなる美琴に美鈴は追撃する。 「彼、もてる感じだし?このままじゃ他の人に奪われちゃうわよ?」 その言葉に顔面蒼白。心当たりがありすぎるのだ。 美鈴は取りあえず茶化すのを止めてより真摯に問いかける。 「初恋なんでしょ?」 「…うん」 「好きなのよね?」 「…うん」 「自分と向き合えないクセにそれを理解しろってのは、恋に破れる臆病者よ。後悔したくないなら彼と過ごす一秒を大切になさい」 そんなありがたい言葉をいただいたのに開幕からつまずいてしまった。 そしてそう在りたい関係を形だけとはいえ命令する始末、母に申し訳なさすぎて泣けてくる。 しかし彼はこんな扱いを受けて不満は無いのだろうか? 偽海原の件のときはそっけない感じだったのに、今の彼がそれと異なるのは気のせいではないはずだ。 (ちょっとは意識してくれてるのかな…) また意識が飛びそうになり、必死に耐える。 夢想するのは帰ってでも出来るのだ。今は目の前の彼に集中しよう。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/――ふたり――
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上琴の奇妙な体験 3 再び時間は戻る。 美琴と上条が5年後上条を追いかけ始めてから、約10分後。 2人は今、5年後上条が住んでいるマンションの一室の前に立っていた。「ここが5年後の俺が住んでる部屋か…………御坂、もう大丈夫か?」「う、うん、大丈夫よ」 そう言った後に、美琴は大きく深呼吸を繰り返す。 何度も何度も、深い深呼吸だ。 しかし、自分の中では爆音で音楽を聴いているように心音が鳴り響き、感じている緊張は過去最大級。 とてもじゃないが平常心に戻るなんてムリな話だ。(とうとう来ちゃった…………どうかな……5年後の私……ほんとに付き合えてるかな……) と、こんな感じで緊張しまくっていたため、道中5年後上条に声をかけられないまま、部屋の前まできてしまったのだ。 もちろん上条も5年後の自分に声をかけようと何度か試みたのだが、その度に美琴がビビって上条を引き止めてしまったため結果は同じだった。 上条が『もう大丈夫か?』と言ったのはこのためである。 気持ちを落ち着かせるため深呼吸を続けていた美琴は、一度目の前のドアを見つめる。 この先に今回の事件の全てのカギを握っている5年後上条がいるのだが、美琴には一つ気がかりなことがあった。(…………想像してたより小さいわね、このマンション……さすがに一緒には暮らしてない……?) このマンション、外から見た感じ多分1LDKだ。 自分の妄想ではもっと豪華で華やかなマンションに住んでいる予定だったため、やや不安に気持ちが傾く。(…………ま、まああれよ、きっと親が許してくれなかったとかそんな理由のはず……うん) 勝手に納得した美琴は勝手にうなずき、生まれた不安をかき消そうとし、改めてドアを見つめる。 ここに入れば全てがわかる。 5年前に帰る方法も、今の自分の近況も、だ。 これが最後、そう決めて美琴はもう一度大きく一つ深呼吸をした。「…………ごめん、おまたせ。 もうほんとに大丈夫」「よし、じゃあ…………インターホン押すぞ?」「………………うん」 美琴は覚悟を決めた。 この扉の先にどのような運命が待ち受けていようと、全て受け入れると。(大丈夫……大丈夫? きっとコイツとは仲良くやってるはず……よね?) 美琴は祈る思いで、ドアを見続ける。 そして上条がインターホンを押そうと腕を伸ばした時だった。「「ッ!?」」 ガチャリ、という音がしたかと思うと、突然目の前のドアが開いた。 それはとてもゆっくり、普通に開ける何倍もの時間をかけて、そのドアは開ききった。 だが美琴も上条も一切ドアには触れていない。 上条はインターホンを押そうとしていたし、美琴はその後ろで祈っていたのだから、触れることは不可能だ。 ということは、もうわかりきったことだが、中にいる人物がドアを開けたということ。「…………」 そう、5年後上条だ。 先ほど外で見かけた時と同じ格好のままの彼は、不思議な物を見ているような様子でこちらを見ている。 5年後上条とのあまりに突然過ぎる出合いに、美琴も上条も思わずたじろぐ。(な、なんで突然…………まだ心の準備ができてないわよ……こっちのタイミングに合わせてでてきなさいよ!!) さっきの覚悟はどこへいってしまったのか、美琴は視線を落とし、心の中で5年後上条に理不尽ないいがかりをつける。 とは言えついに会えた、会ってしまった、これでもう後戻りはできない。 だがしかし、聞きたい事がたくさんあるはずなのに、言葉が出てこない。 帰る方法や、なぜここに来る事になったのか、そして自分の近況も。 なのに極度の緊張のためか、体が、口が、全く動かない。 そして訪れる沈黙。 突然のことで、美琴も上条は何も言葉を発せなかったのだが、5年後上条はにっこりと笑って「――ようこそいらっしゃいませ、5年前のお二人さん」 慣れた様子でそう言った。 まるでお店で店員に迎えられるような対応。 そんな5年後上条を見て、ちょっぴりときめいてしまったのは内緒だ。 そんな感じで美琴が惚けているうちに、上条がようやく口を開き、一つ目の質問をぶつける。「え、あ、えーと……お、俺、だよな?」「当たり前だろ? 正真正銘、どこからどうみても俺はお前、『上条当麻』だ」「あ、ああ……ですよね……」 上条の当たり前すぎる質問に答える五年後上条。 と、同時に彼は上条をジロジロと、頭の先からつま先までまんべんなく見回していく。 「いやー、それにしても5年前の俺ってこんな感じだったっけ? もうちょっと大人っぽくなかった?」「何言ってんのよ、そんなもんでしょ?」 その声は突然聞こえてきた。 美琴は一体どこから、と思ったが答えはすぐにわかった。 5年後上条の背後からだ。 今まで彼にばかり注目していたため気がつかなかったが、誰かいる。 5年後上条で隠れ姿は見えないのだが、美琴はその声に聞き覚えがあった。(い、今の声は…………まさか……) 美琴の鼓動が一瞬のうちに加速する。 血液が体中を駆け巡り、大気中の酸素を欲し始める。 だが、美琴は呼吸をすることさえ忘れる勢いで、今の声を脳内で繰り返し再生し、間違いがないかを確かめる。 そうしている間にもその声の主は、部屋の奥から上条の後ろへと歩み寄ってくる。 肩くらいまである茶髪でエプロンをしたその姿は、今までにずっと見てきた姿。 そう、それは――「わ、私…………?」 美琴は自信無さげに尋ねかけた。 5年後上条の後ろにいたのは、19歳になったと思われる自分、つまりは御坂美琴。 外見は上条以上に変化が見られ、特に自分には無いものが胸にはあった。 だが、そんなナイスバストを気にしている場合ではない。 何度も何度も彼女の顔を見直すのだが、間違いなく自分だ。(ほ、ほ、ほんとに私……? …………ってことは、私がいるってことは! コイツと付き合ってる……ってこと……?) 胸がじんわりと温かくなった。 信じられないようなことだが、これは夢ではない。 紛れも無い5年後の現実なのだ。――ヤバい、超嬉しい もう顔のにやにやが治まってくれない。 そして上条も突然の5年後美琴の登場に驚いたようで、目を白黒させていた。「え……マ、マジで御坂か!? ……なんか5年でだいぶ変わってるな…………」 彼の視線が5年後の自分の胸にいっているような気がするのは気のせいだろうか。 いや多分気のせいじゃない。 今は最高潮にテンションが上がっているためいいが、普段なら即電撃ものだ。 だが、そのテンションを下げるような言葉が、5年後美琴から飛び出した。「ちょっとちょっと、私御坂じゃないわよ?」「「え?」」 美琴は思わず固まった。 急激に血の気が引いた気がする。 『御坂じゃない』 その言葉はそれほどの威力を持っていた。 “御坂じゃない”ということはつまり、美琴でも、『妹達』でもないということ。 自分に姉妹がいるなんて話は生まれて14年間一度も聞いた事がないので、その線は無い。 にもかかわらず、今5年後上条の後ろには、自分を5歳ほど成長させた女性が確かに立っている。 もはやわけがわかない。 この女性は自分ではないのか、違うのならば一体誰なのか、もしかしてクローンの計画が再開されたのか。 混乱する美琴だったが、彼女を見ていたその時あるものが目に入った。「……ん? …………え……そ、それは……」 『それ』を見た瞬間、頭が真っ白になった。 『それ』は『そこ』にあるはずがない物、というか『そこ』に『それ』があってはヤバい、いやヤバくはないが異常だ。 上条はまだ気づいていないようだが、美琴はもう『それ』に釘付けになっていた。(…………ちょっと待って、ちょっと待ってよ……そんなことあるわけ…………あるわけ……………でも、もしありえたとしたら……) “ありえない、なんてことはありえない” 有名なホムンクルスが言った言葉であるが、それが今の状況にぴったりだ。 この目の前ある光景全てから、美琴は改めて推測する。 『5年後上条と一緒にいる』、『御坂じゃない』、『とある物』、これらより導き出される答えはただ一つ。 全く持って信じられないが、それしか思いつかない美琴はおそるおそる自分の答えを口にする。「御坂じゃないってことは………………上条……?」 この意味がわかるだろうか。 わかる人にはわかるだろうが、上条は全く理解できていないようで、『…………いやいや御坂、お前は一体何言ってんだ? 上条さんは意味がわかりませんことよ』と言いたいような顔でこちらを見ていた。 そりゃいきなり『御坂じゃなくて上条』なんて言えば10人が10人そんな感じの反応を見せるだろうし、言った本人の美琴だってまだ自分の言った答えを信じれていない。 戸惑う美琴と上条、そんな2人に5年後美琴が歩み寄ってきたかと思うと5年後上条の隣で足を止め、サラリと正解を言った。 「そうよ」「え?」「だからその通り、私は『御坂』じゃなくて『上条』よ」「え」 美琴に続き上条も固まった。 5年後美琴のほうを向いて、そのままピクリとも動かない。 美琴は5年後の自分の左手薬指付近を指差した。「じゃ、じゃ、じゃあ、『それ』、っていうか、その指輪は……本物?」 てその指輪を指す指、というか腕全体が震える。 指輪を指摘された5年後美琴はというと、嬉しそうに左手を顔の前へと挙げる。「ああこれ? もちろん本物の結婚指輪よ、いいでしょ」「結婚……指輪…………?」「ああ、俺たち今年の春に結婚したんだよ。 いや、まだ数ヶ月しか経ってないのに『御坂』って響き懐かしいな」「2人共もうわかったでしょ? 私の名前は『上条美琴』で、私たちは夫婦ってことよ♪」「…………ふ、ふ、ふ……夫婦…………?」 これ以上の情報処理はもう不可能。 『夫婦』というワードを聞いた美琴の脳はオーバーヒートを起こし、それはとてもとても幸せそうに気絶してしまったのは、言わずともわかるだろう―― その部屋は美琴が予想した通り、1LDKの造りだった。 ドアを開けて入るとまず廊下があり、右側にトイレと洗面所(浴室)が、左側には寝室に使っているという5.5畳の洋室へと繋がる扉がある。 そして廊下を抜けると、そこにはベランダ付きで約14畳のLDKが広がっていた。 座り心地のよさそうな2人用のソファ、その正面には40インチほどの大きなテレビ、食事に使っているのであろうテーブルとその側にイスが4つ、その他家具も充実していて、そこそこ良い暮らしをしているようだ。 美琴はこれを『小さい部屋』と思ったようだが、上条からしてみればこの暮らしは十分過ぎる。 そしてその室内にいるのは、4人の男女。 世界を救ったヒーローが2人と、最強の電撃娘が2人(1人はソファにて気絶中)だ。 5年後の自分たちがキッチンで何かしている間、ヒーローの片方は、イスに座り頭を抱えていた。(マ、マジで……俺5年後には御坂と結婚してんのか…………) 上条にとって、これは予想外中の予想外だった。 ぶっちゃけた話、5年後に彼女ができてる自信はあった。 美琴にふざけて『彼女できてるんじゃね?』とか言った後、街中で5年という月日がどれだけ変化をもたらすかを見て、5年あれば自分にも出会いくらいあると思っていた。 ところが、だ。 蓋を開けてみれば、彼女を飛び越して『妻』となっていたのはとても身近にいた人物。 そんなことなど。今の上条と美琴の関係からして考えられないようなことなのだから、そりゃビビる。 だが問題はそこじゃない。 いや、もちろん『美琴が将来の嫁』ということも大問題だが、今はそれ以上の問題がある。(……御坂すっげーショック受けてたよな……『妻』って聞いて気絶するし…………) 心の傷とか負ったらどうしよ、などと上条は呟く。 つまり、彼女の心情のほうが上条にとっては問題だった。 現在美琴は絶賛気絶中。 部屋に置いてあるソファーの上で気持ち良さそうに眠っているが、すぐに起きて現状を認識するだろう。 その時彼女が受けるさらなるショックは計り知れないのではないだろうか、と上条は考えた。 もちろんその考えは大はずれだが。 そんなこんなで、美琴へどうやって対応しようか悩む上条だったが、幸いまだ時間はある。 彼女が起きてくるまでに、なんとか 『できるだけ長く眠っていてほしい』と願う上条だったが、その願いは叶わなかった。「ん?」 足音が聞こえたのでふと顔を上げると、キッチンにいた5年後美琴がソファの美琴の元へ歩み寄って行った。 かと思うと、気絶している彼女肩を掴み、思い切り前後に揺さぶり始めた。「ほらいつまで気絶してんのよ! いい加減起きなさい!!」「ちょ!!」 上条が止めようとする間もなかった。 ガクガクと激しく揺さぶられた美琴は、当然目を覚ます。 「ふぁ……はれ……?」 5年後美琴がぱっと手を離すと、美琴は頭をくらくらさせたまま右手でごしごしと目をこする。 起きた、起きてしまった。せっかく時間があると思っていたのに。 上条が唖然としながらその状況を見ていると、美琴はは上半身を起こした。 そんな5年前の自分の姿を見た5年後美琴は『よし』と呟いた後、上条に対して、 「ごめんね~私のせいで時間取っちゃって。 じゃ、もうちょっと待っててね」 そう言ってバッチリウインクを決めた5年後美琴はキッチンへ行ってしまった。 『私のせいで』というのは、5年前の、つまり14歳美琴を意味しているのだろうが、上条としてももっと時間がほしかったため、『なぜ起こす』という気持ちが強い。 ともあれ、リビングに残された上条は、(キッチンに5年後の自分たちの姿が見えてはいるが)寝起き美琴と2人きり。 まだ美琴への対応策はまとまっていないが、とりあえず声をかけてみる。「あ、あの……御坂…………だ、大丈夫か?」「んー……?? ここは…………あ……そうだ……未来、だっけ」 美琴は完全に覚醒したらしい。 むくりと上半身を起こした彼女と、ばっちり目が合った。(…………もう、電撃食らう覚悟を決めるしかないか……) 上条は小さな声で『不幸だー』と呟いた。 しかし、この後の展開はまったまた予想外。 きょろきょろと室内を見回し、キッチンに5年後の2人の後ろ姿を目にした美琴は「わ、私たち、結婚したみたいね…………えへへ……」「……あれ? 怒ってないの……か? 『なんでアンタが私と結婚してんのよー』みたいなこと言ってくるかと思ってたんだけど……」「え、いや、あの…………別に……ね、そんなことは……」 美琴は頬を紅く染め、上条から目をそらした。 そのちょっぴり可愛い反応に、上条は困惑する。(え? 何この反応。 予想と違うんですけど…………御坂は俺と結婚することが嫌じゃないのか? なんかむしろ喜んでるような気がするのは…………気のせいに決まってるよな) 誰か彼に常識というものを教えてやってほしい。 普通なら、その態度を見れば美琴の気持ちくらいすぐわかるものだが、さすが鈍感王子といったところだいろうか。 で、予想では即電撃だと思い、未だに右手を美琴の方向へ身構えたままの上条の前にコーヒーが置かれた。「おまたせ、コーヒー入ったぞ。 熱いから気をつけろよな」「お、おう……ありがとな…………」「ほら、“私”も早くこっち来なさいよ。 私たちに聞きたい事あるんでしょ?」「あ、うん……」 5年後美琴の呼びかけに美琴はソファから降り、上条が座っている隣のイスへと座った。 の、だが、なぜか距離ができる限り距離を取ろうとしているようで、机の一番端まで移動して行った。 それを見た上条は考える。(?? 怒ってはないみたいだけど…………ひょっとして避けられてる? やっぱりイヤだった、っていうか嫌われた……? それはさすがにキツいな…………) 『御坂に嫌われた』という間違った考えに、ちょっとショックを受ける上条だった。 その一方、5年後上条と5年後美琴の間は『0』。 美琴が上条の左腕に抱きつく形で、ぴったりくっついている。 どうやら5年後の2人はこれが『当然』のことのようで、5年後上条は5年後美琴の頭を優しくなでながら、「で、5年前の俺。 まず何から聞きたい?」「あ、ああ、えーとな……」 5年後の2人には、聞きたい事はもちろん山ほどある。 多過ぎて困るレベルだ。 目の前の2人のラブラブっぷりについても聞いてみたかったが、とりあえずは根本的なことを選び上条は質問する。「じゃあまずここは5年後……ていうか俺が21歳の時代でいいんだよな?」「ああ、その通りだ。俺は21歳、美琴は19歳ってことだな」「だよな……なのに結婚してんのか……? その年齢だとまだ結婚しないで付き合ってるのだ一般的だと思うんだけど」「一般的にはな。 でも俺は美琴が高校を卒業すると同時にプロポーズしたからさ」 すると5年後美琴は、後ろの棚の上に置かれていた2つの写真立てを手に取り、上条と美琴へ差し出した。 「ほら、これが結婚式の写真よ。 よく取れてるでしょ?」 そこに映っていたのは、タキシードを着た上条の姿と、ウエディングドレスを身にまとった美琴の姿だった。 上条が美琴をお姫様だっこし、2人は満面の笑みを見せている。 そしてもう1枚はというと、式場内で永々の愛を誓い合っている瞬間、つまりキスしている写真だった。 「す、すっげー幸せそうだな……」「もちろんよ! ほんとに幸せだったんだから。 ま、今でもその幸せは続いてるけどね」「そりゃ上条さんは美琴を一生幸せにするって誓ったからな」 えへへ、と笑う5年後の2人。 実に微笑ましい。 そんな2人と、結婚式の写真を見た美琴は小さく呟いた。「いいなぁ……」「へ? いいな? 御坂も結婚したいのか?」「ええ!? …………それは……まあ、したい、かな…………」「やっぱ女の子はそういうこと考えるんだなー。 でも大丈夫だって、将来的にはできるだろ。 世界には何億って人間がいるんだからさ…………って、御坂? なんか不機嫌になってない?」「なってないわよ……このバカ…………」 そういいながら、美琴は上条を睨みつける。 ほんのわずかながら電気が宙を漂っているのも目に見えるし、誰がどう見ても不機嫌になっている。 それを見た5年後上条は「いや5年前の俺。 世界には何億の人がいるとか言ってるけど、将来美琴と結婚するの俺だぞ?」「…………あ」 5年後の自分のツッコミに上条は『俺は馬鹿か』と思った。(そうじゃん…………目の前で俺結婚してるじゃん……ていうかこのままいくと俺も5年後には御坂と結婚することになるのか?) そう思い、ちらっと美琴に視線をやると、「け、結婚……私とコイツが…………5年後には……」 『結婚』という事実を再認識したのか、彼女はなんか様子がおかしかった。 顔は最早当然のように赤く、どこか上の空のようだ。 声を書けようかとしたのだが、その視線に気づかれたのか、ふいにこちらを見た美琴と目が合った瞬間に再び目をそらされた。(……やっぱ避けられてんのか) と、まだまだ勘違いを続ける上条は一つため息を吐いてから、話を本題へ戻す。「いやでもさ、21歳っていったらまだ大学生だろ? 働いてもないのに結婚なんてして大丈夫なのか?」「大学? 俺、大学へは行ってないぞ」「え……行ってないのか? まさか俺の事だから浪人中とか…………?」「いやいや浪人とかしてねーから。 高校卒業してから働いてるんだよ」「マジか!? 働いてんのか!? ……なら結婚してても……大丈夫なのか? 働いているのならば、自分の力で生活しているということ。 親や美琴に頼っていないということがわかり、少し安心した上条に5年後美琴は再び写真を手渡す。 「でね、今度はこれ見てくれない?」「これ……何だ?」 今度の写真に写っているのは、喫茶店のような建物の前でお揃いのエプロンをしている自分と美琴の姿だった。 当然のごとく2人とも満面の笑みだ。「喫茶『KAMIKOTO』……? ここで働いてんのか? それになんで御坂まで同じ格好して写ってんの?」「あ、ひょっとして私はここでアルバイトしてるとか? 」 上条と美琴が複数の質問を投げかけると、それに5年後美琴が答える。 だが、答えといっても、それは彼が望んだような答えではなかった。 「アルバイト? 何言ってるのよ」 ほんの少し顔を傾けた後、彼女は軽く微笑み「これは私たちのお店よ。 2人で一緒に喫茶店をやってるのよ、名前でわからなかった?」「「え」」 上条は自分の耳を疑った。 『私たちのお店』、『2人で一緒に喫茶店をやってる』という2つのとんでもワードが聞こえてきたきがするが、気のせいだろうか。 そして上条と美琴はもう一度手元の写真を見てみる。「……ま、まさか、この喫茶店の名前の『KAMIKOTO』って……」「私たちの名前から……?」「そうよ、上条当麻の『上』と上条美琴の『琴』をとったの。 ほんとは2人の名前からとって『MAKOTO』にしようかと思ったんだけど、当麻がこっちの方が語呂がいいっていうから」「さいですか……」 とても嬉しそうに話す5年後美琴と、それを笑顔で見ている5年後上条と、顔が引きつる上条。(5年後の俺たちってどんだけラブラブなんだよ……一緒に経営って…………ていうかこれはさすがに御坂も嫌なんじゃ――)「わぁ…………これが私たちのお店……」「ありゃ……?」 また上条の予想は外れた。 美琴は嫌がるどころか、目を輝かせて写真に見入っていた。 “食い入るように見る”とはこういうことを言うのだろう。 しかし、上条は彼女の目の輝きには気づかない。(これも嫌じゃないのか? ……ていうか喜んでる? いやまあ怒っていないならいいか) ほっとした上条は、机の上に置かれていたコーヒーカップを手に取り、一口飲んだ。 何気なく飲んだ一口であったが、上条はその味に驚愕する。 「…………このコーヒー美味くね? 5年後ってコーヒーまで進化してんの? 普通じゃない美味さなんだけど」「え、どれどれ…………わっ! ほんとに美味しいわね。 インスタントじゃないわよね?」「もちろんインスタントじゃないわよ。 このコーヒーは当麻が作ったんだから」「え……これを!? 冗談抜きですげー美味いんだけど……マジで俺が?」「大マジよ。 お店でもすっごい好評なんだから」「これを店で出してるのか…………これだけ美味けりゃ客も入るだろ」 それほどコーヒーは美味しかった。 今まで飲んできたコーヒーの中ではダントツだ。 上条と美琴の反応に、5年後上条は少し恥ずかしそうな様子を見せながら「高校出て2年間は武者修行してたからな、味にはそこそこ自信あるぜ。 だからお客さんは結構来てくれるけどなぁ……俺は心配なんだよ……」「心配? 何がだ?」 コーヒーの味は問題ない。 ということは飽きられること、とかなのか。 と、思いきや、5年後上条の答えはまたまた予想外の物だった。「男の客だよ!」「…………は?」「は? じゃねぇって!! だって美琴は超可愛いじゃん! 美琴目当てで来る客なんて山ほどいるんだぞ!? 上条さんは日々心配ですよ……客の野郎共が俺の美琴に手を出さないかってことが……」 冗談だろ? と、声に出そうかと思ったが、上条は止めておいた。 目の前で本気の様子で悩む彼に『冗談』などという言葉をかけることはできなかった。 そんなわけで眉間にしわを寄せリアルに心配する5年後上条に、5年後美琴が言った。「何言ってるのよ。 当麻目当ての女の子だっていっぱい来るじゃない。 私たちが夫婦だってことはお客さんも知ってるはずなのに、毎日メールアドレス交換してくださいって言われたり、何十通もラブレターもらったり、ストレートに好きですって言われたりしてるし…………そっちの方が心配よ」「…………確かに最近やたらモテる気がするけど、全部断ってるだろ? 上条さんは美琴しか愛さないから心配しなくてもだいじょーぶ」「……ほんとに? よくお店の中でも女の子に抱きつかれたりしてるじゃない……」「あ、あれは不可抗力だって!! 毎回言ってるだろ? この指輪に誓って、上条さんは浮気なんてしませんことよ?」 そう言った5年後上条は、5年後美琴の頭を優しくなでる。 フラグ体質で女子を引き寄せる上条、看板娘として男子を呼び込む美琴。 この2人が経営する喫茶『KAMIKOTO』が毎日長い行列を作るほどの超人気なのは、容易に想像できるだろう。 そして5年後上条は知らない。 女子中高生は“わざと”つまずいたりして、抱きついてきていることを。 そんで。 このままではいつまで経っても真相が知れそうもないので、上条がため息まじりに言う。「あのー……いちゃついてるとこ悪いんだけどさ、そろそろ5年前に帰る方法教えてくれないか? 時間も時間だし俺腹減ったんだよ」「お腹減った? じゃあご飯にしましょ♪」「え、いや帰る方法を……」「よーし、じゃあ俺も手伝うよ」「人の話聞けよ……上条さん泣くぞ……」 今の自分からでは考えられない2人の仲の良さに、若干、いや普通にうんざりする。 しかし、この後5年後の自分たちのラブラブっぷりを目の当たりにすることになる――
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小ネタ 第8回 異教のサルでもわかるツンデレ語講座 こんばんは。異教のサルでもわかるツンデレ語講座の時間です。[前回の吹寄制理さんの回で、「大覇星祭」と表記するところを、 誤って「ナチュラルセレクター」と表記してしまった事を、改めて深くお詫び申し上げます。]今週は2回目の登場となります。御坂美琴さんを例に見ていきましょう。まずは日常会話から。美琴 「…ねぇ、アンタってさ……その…女友達多いじゃない? かか、彼女とか…ほ、欲しくない訳…?」上条 「そりゃできるなら欲しいけどさ……俺なんかを好きになってくれるヤツなんていないだろ?」美琴 「ひ、一人くらいいるんじゃないの!? アンタのことが好きでアピールしてる人が!!」上条 「例えば?」美琴 「た、例えば……いつも帰り道で偶然出会ったり、お、お揃いのストラップやペアリング渡されたり…… あ、あ、あくまでも例えばだからね!?」上条 「……そんなの御坂しかいねーじゃん」美琴 「ア、アレー? ソー言エバソーネー、グ、偶然ネー」上条 「ったく、からかうなよ。一瞬本当に『御坂が俺のこと好きなんじゃないか』って思っちまったじゃねぇか」美琴 「あ、あはは! もう、そんな訳ないじゃない! あはははは…はは……はぁ……」お互いにもう一歩、といったところですね。では早速ツンデレ語を標準語に訳してみましょう。美琴 「アンタってさ、彼女とかは欲しくないの?」上条 「そりゃできるなら欲しいけどさ……俺なんかを好きになってくれるヤツなんていないだろ?」美琴 「そんなことないわよ! アンタが気付いてないだけで、アンタのことが大好きな人はいっぱいいるんだから!」上条 「例えば?」美琴 「目・の・ま・え! 誰がいる?」上条 「……そんなの御坂しかいねーじゃん」美琴 「えへへへへ…そういうこと!」上条 「ったく、からかうなよ。一瞬本当に『御坂が俺のこと好きなんじゃないか』って思っちまったじゃねぇか」美琴 「い、一瞬だけ!? も~~!!私は本気なのに~~~!!!」はい。とても微笑ましい会話となりましたね。次は勉強を教えてもらった後の会話を見てみましょう。上条 「ぶはぁ~~~終わった~~~!!! サンキュー御坂、おかげで助かったよ」美琴 「別にいいわよ。大したことじゃないし」上条 「けどわざわざ休日に呼んどいて、宿題手伝ってもらった挙句、このまま帰すのは悪いよな…… お礼したくても金も無いし……何か俺にしてほしいことってあるか?」美琴 「は、はあ!? な、無いわよそんなモン!!」上条 「あっ! じゃあご褒美のチューなんてどうでせうか?」美琴 「なっ!!!? バ、ババババカじゃないの!!? そそ、そんなのご褒美どころか罰ゲームじゃない!!!」上条 「…いや、冗談だよ……」美琴 「え? あ、うん…冗談ね。うん、も、もちろん分かってたわよ? うん」このままでもいい感じですが、ツンデレ語を訳して見てみましょう。上条 「ぶはぁ~~~終わった~~~!!! サンキュー御坂、おかげで助かったよ」美琴 「私もアンタん家来れて楽しかったから、おあいこよ」上条 「けどわざわざ休日に呼んどいて、宿題手伝ってもらった挙句、このまま帰すのは悪いよな…… お礼したくても金も無いし……何か俺にしてほしいことってあるか?」美琴 「それは…まぁ…いっぱいあるけど……」上条 「あっ! じゃあご褒美のチューなんてどうでせうか?」美琴 「……………いいの?」上条 「…いや、冗談だよ……」美琴 「やだ! 私もうスイッチ入っちゃったもん! チューしてくれるまで帰らないもん!!」標準語に直しただけで、とてもストレートになりましたね。 それでは次は、インデックスさんも交えた会話を見てみましょう。禁書 「……何で短髪がここにいるのかな。ここはとうまと私のお家なんだよ!」美琴 「確かにここはアイツの寮だけど、アンタはただの居候でしょ!?」禁書 「だからって短髪が来る道理は無いんだよ! かーえーれ!かーえーれ!」美琴 「よっしゃ、そのケンカ買ってやろうじゃない!」上条 「……あのさぁ、お前等…前から思ってたんだが、何でそんなに仲が悪い訳?」禁書 「とうまがそれを聞くのはおかしいかも!!」美琴 「そうよ! アンタがはっきりしないのが悪いんじゃない!!」上条 「はっきりって……何をだよ」禁書 「それは……」美琴 「ねぇ……」上条 「?」それでは早速訳してみましょう。禁書 「……何で短髪がここにいるのかな。ここはとうまと私のお家なんだよ!」美琴 「いたら悪い訳? 私だってアイツと遊びたいの!」禁書 「だからって短髪が来る道理は無いんだよ! かーえーれ!かーえーれ!」美琴 「うっさいうっさい!! アンタはいつでもアイツを独り占めできるんだから、たまにはいいじゃない!!」上条 「……あのさぁ、お前等…前から思ってたんだが、何でそんなに仲が悪い訳?」禁書 「とうまがそれを聞くのはおかしいかも!!」美琴 「そうよ! アンタが、私かこの子かはっきり選べばこんなことにはならないんじゃないの!!」上条 「はっきりって……何をだよ」禁書 「それは……」美琴 「これだけ言っても気付かないって…どんだけ鈍感なのよアンタは……」上条 「?」やはり上条さんは上条さん、という事ですかね。それでは最後はいつもの様に、普段使っている言葉を、いくつかツンデレ語に訳してみましょう。「好きになっちゃうじゃない」⇒「思いっきりカッコつけてんじゃないのよ!!」「名前で呼んでよ」⇒「ビリビリ言うな!」「だって…少しでも一緒にいたいんだもん」⇒「用事がある訳じゃないんだけど。……ある訳じゃないんだけどさ」「もう! どれだけ心配したと思ってんのよ!」⇒「今日という今日こそこれまでの事全部話してもらうわよ!」「ずっと一緒にいる」⇒「今度は一人じゃない」と言ったところで、今週の、異教のサルでもわかるツンデレ語講座はここまで。来週は麦野沈利さんを例に解説したいと思います。それでは、またお会いしましょう。次も見たいなら見れば!? わ、私は別に見て欲しいなんて、思ってないんだからね!!
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 「AaAa」 auau(7-270)氏 Aサイド ◆kxkZl9D8TU氏 ▲ auau(7-270)氏 とある未来の・・・ 1 プロローグ とある未来の・・・ 2 1.訪問者 とある未来の・・・ 3 1.訪問者 とある未来の・・・ 4 2.初めて とある未来の・・・ 5 3.惹き合い とある未来の・・・ 5 3.惹き合い とある未来の・・・ 6 4.頼み事 とある未来の・・・ 6 4.頼み事 とある未来の・・・ 7 5.最終日 とある未来の・・・ 7 5.最終日 小ネタ 超電磁砲五巻特装版裏表紙にて とある未来の・・・ 8 5.最終日 とある未来の・・・ 9 5.最終日 とある未来の・・・ 10 エピローグ 雨のち曇り のち晴れ 1 前編 のち晴れ 2 中編 告白の練習 ▲ Aサイド ◆kxkZl9D8TU氏 小ネタ いちゃいちゃするのを愛でる場所 コトバ、アソビ。キモチ、・・・ たまには立ち位置を変えて 美琴の不幸な初体験 嘘から出た美琴 ▲ 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/投稿者 Back
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とある科学の反逆者達 第一部 序章① 反逆者が生まれた日「だからお前は笑っていいんだよ。 妹達は絶対に、お前がたった一人で塞ぎ込む事なんか期待してないから。 お前が守りたかった妹達ってのは、自分の傷の痛みを他人に押し付けて満足するような、そんなちっぽけな連中じゃねーんだろ?」 この言葉によって美琴の悪夢のような幻想は真の意味で壊され、そして上条に対する新しい幻想が生まれる。 少し考えればその幻想を生み出した感情の正体はすぐに分かった。 ただ美琴はその感情を受け入れていいかどうか分からない。 例え上条や妹達が自分のことを許してくれたとしても、自分に人並みの幸せを送る権利があるのだろうか? それに死んでいった妹達の本当の気持など誰にも分かるはずがない。 きっと自分はこの罪を一生背負っていかなければならないのだろう。 だから美琴は敢えて上条の言葉を突き返すように言った。「いい加減なことを言わないでよ。 例えアンタや妹達が許してくれたとしても、私の罪が消えるわけじゃない それに死んでいった一万三十一人の妹達の本当の気持ちなんて誰にも分からない。 私は一生この罪を背負って生きていく。 アンタには感謝してもしきれないけど、あまり適当なことを言うと承知しないわよ!!」 病室の中には耳が痛くなるほどの沈黙が流れる。 上条の顔を見るとその顔はどこか苦痛に歪んでおり、気まずそうな表情をしていた。 そのことに少し罪悪感を感じながらも、これで良かったと美琴は病室の出口へと向かう。 美琴はこれから学園都市を敵に回した、学園都市そのものを崩壊させるための戦いに赴こうとしていた。 絶対能力進化における学園都市の非人道的な実験を学園都市の内部だけでなく、外部にも漏らそうとしているのだ。 そうすれば世界から学園都市への非難は免れず、下手をすれば学園都市そのものが瓦解しかねない。 それは世界に大きな混乱を生むことになるだろう。 しかし例え世界を敵に回そうとも、美琴は学園都市で二度と非人道的な実験が行われないよう戦い続けるつもりだった。 そして学園都市の上層部の人間はどんな手段を以ってしても、学園都市の危険分子になる自分を消しに掛かるに違いない。 上条がそのことを知ればきっと協力を申し出てくれる。 それは自惚れではなく、上条の性格を考慮した上での結論だ。 これ以上、無関係な上条を巻き込むわけにはいかない。 自分と妹達を救ってくれた上条の恩に報いるためにも、絶対に勝たなければならない戦いだった。 しかし美琴が病室のドアの取っ手に手を掛けたその時……。 「……お前、学園都市に喧嘩を売るつもりだろ?」「え?」 上条から出た言葉に美琴は思わず振り向く。 そこには真剣な表情で自分の顔を見据える上条の眼差しがあった。 美琴は上条の言葉に理解が追いつかない。 何故自分の考えが読まれてしまったのだろうか? しかしここで上条の言葉に甘える訳にはいかなかった。 美琴は努めて平静を装って、茶化すようにして言った。「……アンタ、一体何を言ってるの? 学園都市の第三位で誰よりも学園都市の恩恵を預かってる美琴センセーが何で学園都市に喧嘩売らなきゃいけないのよ?」 しかし上条の関心を逸らすべく冗談めいて言ったにも拘らず、上条の表情は真剣そのものだった。 その表情はまるで全てを見透かしているようで、美琴はそれ以上言葉を続けることができない。 そして言葉に詰まった美琴に対して、上条は少し表情を崩すと微笑みながら言った。「……馬鹿な俺でも分かるんだ、お前が気付いてないはずないだろう? 例え実験を止めて形だけ妹達を救っても根本的な解決にならない。 俺も学園都市の裏の事情に詳しいわけじゃないけど、今回の件で学園都市に巣食ってる闇の一端は理解したつもりだ」「……」「ここまで来たんだ、最後まで付き合わせろよな。 まあ上条さんは無能力者なんで出来ることは限られてるかもしれないが、お前が辛い時に支えてやることくらいはできるはずだ」 そんなことはないと美琴は心の中で思う。 自分があの鉄橋の上で絶望に沈んでいる時、上条が現れてくれたことにどれだけ救いを感じたか……。 そして妹達のためにボロボロになりながら戦ってくれた上条が頼りにならない筈がなかった。 しかし上条がどうして良好な関係とはいえなかった自分のためにそこまで言ってくれるか分からない。「……どうして、どうしてアンタはそこまで!?」 美琴は錯乱した様子で叫ぶようにして尋ねる。 すると上条は悲痛な面持ちをする美琴に対して優しく言った。「鉄橋でお前と対峙した時、俺はお前の強さを知った。 自分の命を賭して妹達を救おうとしているお前の姿を見て、誰かのために戦う本当の意味を初めて知ったんだ」「アンタだって、いつも誰かのために動いてるじゃない? 今回の件もそうだし、虚空爆破事件の時だって自分の危険を顧みずに……」 すると上条は少し訝しげな表情を浮かべる。 美琴は知らないが、上条はとある一件でエピソード記憶……即ち思い出を全て失っている。 恐らく美琴が言っているのは記憶を失う前の自分のことだろう。 そのことに過去の自分に対する劣等感のようなものを覚えるが、今はそれを気にしている場合ではない。 美琴は再び一人で闇の中に足を踏み入れようとしている。 そんな美琴を一人にする訳にはいかなかった。 「……昔のことは後で話すとして、とにかく俺はお前に誰かを救うために戦う決意を教わったんだ。 それと同時にお前のことを理屈抜きに守ってあげたいと思った。 だからお前が一生罪を背負って生きていくっていうなら、俺にも一緒に背負わせてくれないか?」 上条の言葉に美琴は頬が火照るのを感じた。 上条が完全な善意から言ってくれていることは分かっている。 しかし一生罪を背負って生きていくと宣言した美琴にとって、どうしても上条の言葉は違う意味を意識させるものだった。「一緒に背負わせてくれないかって、人が聞いたら勘違いするようなこと言ってるんじゃないわよ!!」「へ?」 上条はやはり意識して言った訳ではないようだ。 そしてそのことが却って美琴を落ち着かせる。 正直に言えば、自分達を絶望の淵から救いだしてくれたヒーローである上条に今度も救いの手を差し伸べて欲しい。 しかしそれ以上に上条を巻き込みたくないという気持ちが強かった。「……アンタの言葉、外から聞いたらプロポーズにしか聞こえないわよ」 美琴の言葉に上条は顔を赤くする。 美琴は敢えて重いことを言うことで、上条の決意を鈍らせるつもりだった。 こうやって追いつめるような形で恩人の優しさを袖にするのは心苦しいが、それでも上条を巻き込みたくない。 上条にこう言ってもらえただけで、既に十分救われているのだから……。 しかし上条から返ってきた言葉は美琴の幻想を殺すのではなく、一転させてしまうものだった。「軽々しくプロポーズみたいな言葉を口にしたことは謝る。 でも好きな女の子のためなら、その覚悟はある!!」 「え!?」 上条の言葉に美琴は再び混乱に陥る。 まさかそんな答えが返ってくるとは思っていなかった。 それに上条に好かれるようなことをした覚えが全くない。 美琴の中で今さっき生まれたばかりの感情が激しく脈打ち、溢れ出してきた。 「で、でも私、アンタに好かれるようなこと何もしてないし……」「まあ確かに二千円札を呑み込まれたのを笑われたり電撃ぶつけられたり、色々あったもんな」「うっ……」 上条の辛辣な言葉が胸に刺さる。 確かに今まで上条と顔を合わせた時は、一方的に因縁をつけ勝負を挑んでばかりいた。 冷静に考えると、これでは子供扱いされたりビリビリ呼ばわりされるのも仕方ないかもしれない。 しかし上条自身はそんなこと気にしていないと言わんばかりの笑顔で言った。「でも自分を犠牲にしてまで妹達を守ろうとしたお前のことを、俺は他の誰でもない自分の手で守ってあげたいと思ったんだ。 それにお前、誰か傍にいないと無茶ばっかりしそうだし……」「アンタに言われたくないわよ!!」「とにかく俺はお前と一緒に歩いていきたい、お前のことを支えてあげたい。 それだけじゃ駄目か?」「本当に私なんかが傍にいていいの?」「当たり前だ」 上条の力強い言葉に美琴は思わず涙ぐんでいた。 そして上条に駆け寄ると、上条の胸に顔を埋めて堰を切ったように涙を流し続ける。 本当は死ぬのが怖かった、しかし過去の自分の罪を清算するにはそうするしかなかった。 そして上条に救われたものの、まだ日常に帰るわけにはいかない。 もう二度とあのような悲劇を生まないためにも、学園都市の闇と戦う覚悟を決めた。 それは孤独な戦いの筈だった。 しかし上条はそんな自分の気持ちを見透かしたように傍にいてくれると言ってくれた。 この先の戦いに本当に上条を巻き込んでいいかは分からない。 それでも上条と一緒なら学園都市の闇を払える、そんな確信があった。「お前はもう一人じゃない。 俺とお前は同じ道を歩んでる、そのことを忘れるな」 上条は美琴のことを抱きしめながら力強く言った。 美琴はレベル5といっても、その本質はまだ十四歳の女子中学生に過ぎない。 自分より年下の美琴がどれだけの覚悟を持って、学園都市という強大な力に立ち向かうことを決めたのか……。 まだ殆ど空っぽな自分には窺い知れない。 しかし例え自分の力が微力なものでも、心から腕の中にいる華奢な少女を守ると上条は強く誓う。 それが美琴自身から教わった大切なものを守るための覚悟だった。 こうして学園都市に対する二人の反逆者が生まれた。 しかし上条も美琴も知らなかった。 特殊な力を持つ無能力者と学園都市第三位の反逆ですらも学園都市統括理事長のプランに含まれていることを……。